相続と相続税対策

相続

自分の子供たちに限って自分の財産を巡って争うようなことはないだろう、といとも楽観的に考え、遺言書も残さない人々が大勢いる。

現行民法は個人の意思を尊重しているので、自分の遺産の処理その他は自分で生前に決めておくべきなのである。それが無い場合にのみ、法定相続になるという事が理解できていない人が多いように思う。

又同居して両親の面倒を看た者が報われず、死んだ途端に子供たちが群がってきて法定相続分をよこせと迫る。

親を看るのは長男とは限らない。実際は嫁が面倒を看ているケースが多いように思う。その嫁から「遺言書を書いておいて下さい。」とは非常に言いにくい。親も身勝手なもので、嫁の世話にはなるが子供には平等に遺産分けをしてほしいという人が多いので、結局は嫁が泣き寝入りをすることになる。

嫁は無給の女中ではない。現代では夫と結婚したのであって、家に縛られるという人は少ないであろうから、すぐ親を施設に入れるという事になる。

そして生きている間は殆ど訪れず、亡くなった途端に遺産欲しさに皆が集合し、醜い争いを続けることが多い。

むしろ嫁は息子の配偶者であって自分専用のヘルパーでは無いことを親も自覚すべきである。そのためには生前、面倒を看る人にはヘルパーさんと同じく契約として費用を払うように家族全員で決めておくべきではないかと思う。

私は、親が何もせず亡くなって、自分の子供たちが骨肉の醜い争いを展開し、結局、兄弟姉妹の縁も切ってしまうという事例をたくさん見てきました。

特に不動産がある場合、不動産は羊羹ではないので、人数分に切り分けることは出来ない。それなのに、長男だけを住まわせたりしたら、その価格が1億円だとすると、残りの子供たちが相続分を主張したら支払不能になることは火を見るより明らかである。不動産は分けられる形に、例えば賃貸にして賃料を分けるとか、売却した代金を分けるとかの方法が考えられる。又不動産は共有にしたら、全員が賛成しない限り売却もできないという事を肝に銘じておくべきである。

実際にあった事例であるが、8人の子供たちがいて、母親は「皆あんたにあげるから面倒看てね」と遺言書を書き、その後喧嘩して、また次の子供の所で同じことをして、死後8通もの遺言書が出てきたのである。

最終のものが効力を有するが、親も子も自分の都合ばかり考えているようにしか思えない。そのケースでは後日談があり、通夜の晩に、リックの中に6,000万円の札束を隠した相続人がいて、大騒ぎになったのである。

2015年から改正相続税が適用されるので、節税対策も含めて、生前に準備しておくのが望ましい。老人になったら相続人の醜い争いを避け、他人に迷惑をかけないように、親が家族に遺産の額を明示し生前にきちんと決めておくことが必要である。

相続税対策

平成27年1月相続税法改正後→3,000万円 + 法廷相続人の数×600万円以上が相続税の対象者となる。相続税の最高税率は55%に変更された。

それでその相続人の方々もあの手この手で相続対策を考えることになる。

被相続人が亡くなった場合には、遺言書がなければ死亡時にいったん民法指定の法定相続分が適用されることになる。しかし相続人間で遺産分割協議をしてそれぞれに分割する方法もある。この場合相続人は弁護士や司法書士そして税理士等の法律のプロを依頼するのが今までは普通であったが、現在は銀行の信託制度を利用する人が増えてきているようだ。

しかしこれには以下のような問題点がある。

  • ● その人の全財産を把握され、アドバイスと称してローンを組みアパート経営を薦められたりすることがあるから要注意である。土地購入にかかる不動産会社への仲介手数料、登記費用、不動産取得税、ローンの利息(これが購入物件価格と等しい場合もある)、事務手数料などがかかるうえ、アパート経営が満室・順調であればまだよいが、これだけ空き家が増えてきている昨今、大きな損害が発生することも視野に入れておくべきだ。当事務所の顧問先もアパート経営を薦められ、莫大な借金を背負い込み、自己破産した例がある。クライアントは契約時に勝手に印鑑を押し契約して問題が起きてから相談に来ることも多いが、これでは後の祭りである。
    又相続財産が不動産だけの場合には、他の相続人が法定相続分を要求した場合、家を売却して相続分を払うか、貸して賃料を分けるかしか方法がない。他の相続人の遺産分割のことまで考えて行動しないと大変。

    ● 2世帯住宅で節税→小規模宅地等の評価減(自宅の土地の評価額を8割引きにしてくれる)の利用を薦められ、書体住宅にしたのは良いが、残された財産は土地付き家のみの場合、他の相続人が法定相続分を要求した場合、家を売却して相続分を払うしか方法がない。他の相続人の遺産分割のことまで考えて行動しないと大変。

    ● 遺言信託→信託銀行に遺言執行まで依頼してあると、解約不可。しかも相続税の申告料や不動産登記費用等は別途かかる。
    報酬もべらぼうに高い。おおむね遺言書の保管時に消費税込みで324,000円、年間保管料が毎年5~6,000円程度。遺言書変更手
    数料が都度5~6万円。
    遺言執行報酬が相続財産額の0・3~2%、しかも最低報酬額が162万円程度は取られる。これは遺言執行に駆る費用のみ、相続税の申告、登記手数料、等がかかる。しかも相続人間でもめると執行者は辞任せざるを得ない。何故ならこういった法律事件は弁護士法に触れるからである。本来こういった業務は弁護士、司法書士(訴額が140万円以下の場合)、税理士の職務であるからだ。

    ● 冬休み期間中に亡くなると、その間、銀行業務はお休みとなり、必要な措置が遅れることがある。

又、生命保険会社からの勧誘で、相続税の非課税枠(法廷相続人の数×500万円)、これが控除されるからと保険加入を薦められることもある。

しかし、当初5年間は解約返戻金が支払い保険料を下回ることもあるので要注意。

結論的には、まず弁護士か司法書士か税理士に相談し、相続税がいくらかかるか計算することから始めるべきである。

そのうえで生命保険に入った方が得か?利害相反がなくて相続人間で遺産分割協議ができる場合はそれに従うのが良い。

しかし争いになりそうな場合には専門家を入れて、きちんとした節税対策・相続対策をすべきである。

相続人にこれらの負担や争いをさせないためには、被相続人が生前にきちんと自分の財産の処理を遺言書に残して相続人に話しておく必要がある。

骨肉の争いは他人の争いの比ではないくらい見苦しく、悲惨な結果となり、絶縁状態となってしまうことも多いということを念頭に置き、最後まで自分の幕引きを準備してから、あの世へ旅立ちたいものである。